
朝、四時に起きてスキイチ宅を出発。長野インターから長野道に乗って一路富山に向かう。まずはピラミッドの噂が高い尖山を目指した。このルートを走るのは初めてでわくわくする。雄大な妙高山の威容に吃驚してしまった。
有磯海SAで朝食、洗面、トイレなどを済ませて落ち着いたところで気を引き締めて出発した。尖山は館山ICを降りて三十分ほど行くと見えてきた。といっても初めて見るので本当にそうなのかは分からない。息子の車には古いけどナビが付いていて、そこには尖山が載っているのでだいたいの見当がつく。かなり離れたところから、山の間からピョコンととんがっている尖山の山頂が見える。確かにピラミッドのようにも見えるが、皆神山のように独立山ではないので分かりづらい。
県道を南下して富山地鉄立山線の横江駅の近くを注意深く通っていたら小さな看板で「尖山登山道」というのが出てきた。慌ててハンドルを切った。
狭い道をしばらく登るとちょっとした原に出る。そこから見ると先ほどの尖山がぐっと近くに見える。まだ早朝のことで全く人気がない。かなり心細くなってしまう。とにかく登ってみようと先を進む。しばらく登っていくと途中で谷の間から尖山が奇麗な三角錐の姿を見せている。確かにピラミッドのように見える。ただしかなり尖っている。工事現場まで来るとこれ以上は車では行けそうにない。一度車をおりて様子を見たのだが、この時間、一人で登るのはちょっと怖い。登れば行き帰り三時間はかかるだろう。先のことを考えるとここでエネルギーを消耗してしまうのもきつい。仕方なく戻って、先ほどの谷間で撮影を済ませた。
一度県道に戻って先に進み、尖山の反対側の姿を撮影しようとあちこち捜し回った。しかしこちらに来てしまうとどれが尖山なのかよく分からない。とりあえずそれとおぼしき山を撮影しまくって立山ICまで戻った。
そこから一気に五箇山まで行って、今度は天柱石を取材するのだ。富山市内を一気に通り抜けて白河郷方面に高速を登る。以外と早く五箇山に着いた。ここも合掌造の村で有名なところである。インターの出口で職員のおじさんが「合掌造の村は左ですよ。」と教えてくれた。県道沿いの村で一休み。天柱石の場所を確認して出かけた。
天柱石は平村からかなり山に入った場所にある。昔と違って今は整備されていて車で入れるようなので行けるところまで行こうと思っていた。「天柱石」という小さな看板のある道に入って走っていく。途中展望の良いところに電波塔がある。そこを過ぎるとだんだんと野性味が増してくる。道路の脇に雪が積もっている。ここも人気が全くない。とうとう雪で車がいけないところに来てしまった。仕方がないのでカメラだけ持って歩くことにした。
しばらく歩くと大きな杉の木が倒れて道を塞いでいる。これではどっちみち車では来れない。ダァーレもいない山をたった一人で歩くこと十五分ほど、荒れた駐車場が現れ、大きな柱に「天柱石」と書いてある場所に出た。そこから山に沿って回り込むとようやく天柱石が姿を現した。
山肌にニョキッと立っている。四、五十メートルはありそうな巨石である。この山は他にこのような石が全くないので一際異様である。真下まで行けるように階段がついている。我を忘れて石を撮影しながら下まで行ってみる。石の裏側にはいくつかの巨石が石組みされている。そこから見上げてもかなりの高さである。ものの本によるとこの上に登ってなにやらお祭りをするらしいが考えるだけで身も竦む想いである。雰囲気的にも不気味なところである。
それでも二十分くらい、あっちこっちから撮影したりして帰路に着いた。途中、この変な感じは何だろう、と思って周囲を見回すと、この辺りだけ木の生え方がおかしいのである。どの木も異様に曲がっているのだ。磁場の関係なのか、いろいろ考えたのだが、結論としてはすぐ真下に固い岩盤があって深くまで根が張れないのでこのようなバランスになってしまったのではないかと思う。だとしたら天柱石の下に巨大な何かが埋まっているのかも知れない。そうだとしたら、これまた大問題である。
天柱石の場所から見下ろすと向こうに道が見える。あの道までいけば向こうから天柱石が見えるかもしれないと思い、あれこれと地形を記憶に入れておいた。元に戻るのも癪なので合掌造の村をゆっくれ見学して道の駅「たいら」に立ち寄ってみた。そこで案内のおばさんにどこか天柱石が見える場所がないか訪ねたのだが「そんな場所はない」という。また、富山方面に行くのならこのまま156号線を下ったほうが早いと教えてくれた。
下っていくと先ほど記憶した緑色の池などが出てきた。車を停めて天柱石を捜してみたがよく分からない。新緑の頃で葉っぱに隠れてしまったのかな…。

今度は高岡市を抜けて二上山に向かった。ここは公式ではないが竹内宿禰の墓がある場所とされている。万葉スカイラインなる道を登っていくとすぐに山頂に出る。カメラを担いで歩いていくと真下には伏木港、遠く富山平野を一望に見渡すことができる。もう少し天気が良ければ双眼鏡で尖山も確認できたかもしれない。
あまり人気はなかったが時折通るアベックやおばさん達に不審な目を向けられながらもカメラに向かってコメントを撮影。このあと伏木港に向かった。

伏木港はこれといった特徴もない、東京に住む私から見たら寂しい感じの港町である。清水ちゃんが伏木港の伏木は「不思議」からきている、というようなことを言っていた。蜃気楼が見えるとか、そういうこともあるのかもしれないが、二上山の麓にある港、ということしか分からない。
富山市内に戻って現在の呉羽山、皇祖皇太神宮のある御皇城山を目指した。今回で三回目か四回目である。いつも下の方から皇祖皇太神宮に行っていたので、今回は上の方から城山と呼ばれる部分に行くことにした。
駐車場には車が数台停まっていて、中では営業中のサラリーマンが惰眠を貪っている。小雨が降りだしたがまだ傘はいらない。急いでカメラを片手に城山に向かって歩く。ちょっとしたハイキングコースで登り降りがある。山登りをしているので難なくこなせたが、以前の自分だったらヒーヒー言っていただろうな。
二の丸とか一の丸の跡を通って城の部分に行ったのだが、とにかく小さい城だったようだ。しかし景色はよく見渡せる。ここから皇祖皇太神宮に通じる道はないようだった。下を見下ろすと富山大学の寮が見える。そこから右に登ったところが御皇城山である。かつてこの一帯は広大な皇祖皇太神宮の社が立ち並んでいたという。この辺りを「金屋」と言うが、これは金色の屋根をした社が立ち並んでいた名残りだとも言われている。そんなことを想像しながら町並みを見渡していると妙な気分になってくる。実は数年前、この皇祖皇太神宮の夢を見た。それもかなりはっきりした夢で目覚めても細部まで覚えている。普通の民家の横の細い道を登っていくと突然開けて素晴らしい寺院のような場所に出る。中に入ると古代の劇場のような場所もある。夢の中で「ここが皇祖皇太神宮かぁ…、」と感激しているのである。その夢が、実は上からの道を行ったところから始まるのである。景色を見ていてデジャ・ブに入り込みかけているような気分になった。
富山での撮影も終え、長野のスキイチ宅に帰ることにした。富山ICから北陸道に乗り有磯海SAで夕食をとった。帰りは糸魚川ICから小谷村、白馬を抜けて帰る。途中小谷村の道の駅にある「深山の湯」で温泉に浸かった。平日の夜で、天気も次第に荒れてきたので客も地元の人が二、三人いるだけだった。実にのんびりと体を伸ばすことができた。
雨の山道をゆっくり走るトラックの後ろについて登っていく。こういう時は多少遅くてもトラックの後ろが楽に走れるのである。
九時半ころスキイチ氏の店に到着。ここで十二時頃まで清水ちゃん達と飲んでしまった。遅くなるとスキイチ氏の機嫌が悪くなってきたので切り上げて寝てしまった。きつい一日でした。

