
今回は平成の好色一代男、KONISHIとの山行きである。ずっと閉じ籠もり気味だったのと、あまり山に慣れていないKONISHIとのコンビだったので、軽く千木良から高尾に抜けるコースに行くことにした。
十時に高尾駅で待ち合わせ、相模湖駅に向かった。電車が少し遅れているということだった。相模湖からバスに乗るのだが、電車が遅れてしまった為に予定していたバスが出てしまっていた。運転手に次の時刻を聞くと50分も待たなくてはならない。「じぁ、歩いていくか、」と言うとKONISHIは「そんなに慌てることないじゃん、そこの食堂で休んでいこうよ、」と言い出した。ここで早くもカックンである。
GIZUMOは仕方なくコーヒーなどを飲んでいたが、KONISHIは鍋焼うどんなどをパクついている。先日まで付き合っていたオネーちゃんの話など嬉しそうにしている。これから山に行くという緊張感など微塵もない。ドーナルのかな…。

ようやくバスに乗って千木良に到着、出発したのは12時だった。天気は好くて暑くも寒くもない絶好の天気である。KONISHIの足でもコースタイムは4時間、大丈夫だろう、と踏んで登り始めた。
このコースで一番きついのはここだけである。30分ほどせっせと登る。最初のうちは山の空気が好いだのハイキング気分だったKONISHIも、少し苦しくなってきたようだった。GIZUMOは最近山に登るときは山の神様に礼を尽くそうと思っていて、祠や地蔵、巨大な岩など感じるところがあるものには手を合わせて柏手を打つようにしている。ちょっと訝しそうな顔をしていたが、KONISHIも「オレもやっとこう、」と一緒に拝んでいる。不審なオッサンが二人で拝んでいる姿は異様な風景である。
相模湖が見渡せる場所で一服。KONISHIはかなり疲れているようだ。ここで甘いものなど少し食べて再び登り始める。すぐに小学生の団体に遭遇。我々にいちいち挨拶をしていくのでけっこう疲れた。でも子供は元気でいいね。あの頃に戻りたいな。
ここからまた登りが続くのだが、KONISHIはずっとオネーちゃんの話をしている。今まで千人以上の女と遊んできたのだが、ここにきてはまってしまったらしい。GIZUMOとは全く違うこの男の話は実に面白い。女と遊ぶことが彼の人生の全てなんじゃないかと思わせるのだ。そんな人間、読者の皆さんの周囲にいますか?。
KONISHIの話を要約するとこうだ。いつものようにキャバクラで遊んでいて、オねーちゃんと仲よくなって付き合うようになったのだが、だんだんその娘といるのが楽しくてしかたなくなった。ある日、その娘から「結婚したい、」と言われて立ち止まった。KONISHIの気持ちはそうしたいのは山々だが、彼もGIZUMOと同じ、既に五十才を過ぎている。今更こんな若い娘と一緒になることは出来ない。もちろん彼には立派な家庭もある。それを壊してまで付き合う余力もない。ということで泣く泣く別れ話を持ち出したのだという。好きで好きでしょうがないんだけど別れなくてはならない。それが辛いのだというのだ。山道を登ってゼイゼイ言いながら、ときおり立ち止まって涙ぐんだりしているのだ。なんだかノロケみたいで聞いてるこっちはアホみたいだなぁ…、と思いながらも、まあ、そんな気持ちも判らなくはないな…、と思って聞いているのだ。
一時に城山に到着。ここでお弁当を食べる。GIZUMOは名物のなめこ汁を注文した。KONISHIは腹具合が悪いといってトイレに直行。他の山だったら野グソだぞ。
ここで小一時間のんびりする。茶店に二匹の猫がいて客の間をまわっては餌を貰っている。GIZUMOも玉子サラダの中からハムをとってやった。ちゃんと体を撫でさせてくれるというサービスをしてくれた。記念写真というか証拠写真を撮って高尾に向かって歩き出した。
一丁平までは下りである。ここでは山の歩き方などを話ながら来た。ここから高尾に向かって登り返しになる。坂がきつくなるとKONISHIはオネーちゃんのことを思い出すのか、とにかくその話をずっとしている。GIZUMOもこの二人の関係をかなり具体的に聞かされて、そのうち小説でも書けそうな気になってしまう。
2;40、高尾山頂に到着。ここからは下るだけである。水を飲み尽くしたKONISHIが販売機でなにか買っている。「どうだった?、」と聞くと、オネーちゃんのことばかり頭にあったので苦しかった登りのこともよく覚えていないという。なるほど、苦しい時はオネーちゃんのことを考えればいいのか、とGIZUMOは勉強したのだった。
山らしい景色が見える「びわ滝コース」で下りることにした。最初の細い階段をおりはじめてちょっと行ったところで、若い女の人と擦れ違った。一瞬だがお互い顔を見合わせて「こんにちわ、」と挨拶をする。おとなしそうな、清楚な感じのかわいい娘だった。すぐさまKONISHIが「可愛い娘だなぁ…、」と言い出して、その娘の品評をこと細かく話しはじめた。一瞬のすれ違いなのにものすごい観察眼である。振り返ってお尻の形までしっかり確認しているのだ。「この調子ならオネーちゃんのこともすぐに忘れそうだな、」と皮肉を言うと「△△チャァ〜ン、」と思い出しているようだ。こいつはオモチャか!。
結局四時前に高尾に着いてしまった。この日は電車なのでGIZUMOは軽く一杯飲んで帰るつもりだった。KONISHIが蕎麦屋に入ろう、と言うのでケーブル駅前の店に入って軽く飲んだ。小一時間飲んで駅に向かうと、件の女の子が歩いている。すぐさまKONISHIが肘で合図してきた。この男はホントに女に目が早い。こう言っちゃなんですが、やっぱり山っていうのは女の子を奇麗に見せるんだね。下界で見るとなんてことない普通の女の娘である。なんてことを思っていると、KONISHIはドンドン歩いてその娘と同じ車両に行ってちょっと離れた、それでもよく見える席に陣取った。GIZUMOも気になってその娘をよーく観察したが、KONISHIの解説には舌を巻く。さすがその道の達人である。一目見てどんな女か判るようだ。「それであの娘をどーしたいの?、」と聞くと、「同じマンションに住んでたらいいなぁ…、」と目をキラキラさせている。こりゃ駄目だ…。
実はこの日、下山途中でGIZUMOは不思議な目にあった。我々二人の前に女性のハイカーがいた。ちょっとお年を召していて進むのが遅いので追い抜きにかかった。KONISHIが先に行ってGIZUMOも続こうと思ったら「ちょっと待ったぁ!、」て感じで大きな蜂がGIZUMOの前に立ちはだかった。6〜7センチある蜂で、ブンブン羽音をたてながら立ちはだかっている。GIZUMOは両手をあげて「どうぞ調べてちょうだい、」と立ち止まった。蜂はGIZUMOの腹の辺りから丹念に調べていく。その時、ふと頭の中に「イキミタマ」のことが浮かんだ。高尾の山の神様が来ているのかな…、と感じたのだ。歩く道すがら、ずいぶんあちこちで拝んだから、少しは通じたのかもしれない。一分近く蜂に付き合ったが「もういいでしょ、」といって体を避けると蜂は通してくれた。羽音は遠くに行ってしまった。あうんの呼吸である。とんでもない男を連れてきてしまったので、神様も吃驚して調べに来たのかもしれないな。高尾の山の神様、ごめんなさい。

