★瑞牆山、神秘の「ひもろぎ」に登る

 2003.10.01ついに念願の瑞牆山(みずがきやまと読む)に登る事になった。この山は奥秩父連峰と呼ばれる一帯にあるのだが、実際は山梨、埼玉、長野の県境、昇仙峡の奥に位置している。私も知らなかったのだが、お隣りの金峰山(きんぷさんと読む)から続く巨石の山でもあったのだ。
 一般的にもその異様な景観から人気の登山スポットになっている。宿敵のIZUMO氏もK氏を誘ってきたことがあるらしい。K氏にとっては初めての登山であったのだが、その苦しさにガタガタになったという。登山の山としても中級になっていて、ルートはかなり険しいと聞いていた。しかし、皆神山など「超古代文明」に興味のあるGIZUMOにとってはどうしても登りたい山の一つなのである。
 IZUMO氏から登山の山として聞いていたそんなとき、スカパーで「ケノムの予言」という番組の中でこの瑞牆山を取り上げているのを見た。その番組の中では瑞牆山や金峰山など巨石遺跡は磁場がゼロになっている特殊な場所で、そこに居ると人間の免疫機能などが飛躍的に増加したり、いわゆる「気」が増大して活力が出てくる、などと説明されていた。確かにこの地帯は古来から修験道の聖地とされていて、いわゆる「神道」系の霊山になっているのだ。テレビで観るその巨石の景観は確かに異様で、大自然の構築物というよりもどこか人工的なものを感じる。もっともIZUMO氏などは絶対に信じないという。しかし、青森の大石神山や黒又山など、実際に日本のピラミッドと呼ばれている山に行ったことのあるGIZUMOにはそれらしい気配が感じられるのだ。事の真相は別にしても、とにかく自分の目で確かめてみたい、という気持ちが強まっていったのである。


 今回の計画は瑞牆山金峰山を一気に制覇しようというもので、初日に瑞牆山を翌日に瑞牆山方面から金峰山を目指す、というものである。最初は単独で行くつもりだったのだが、息子が一緒に行きたい、というので二人連れで行くことになった。彼は若いので大丈夫だろう。GIZUMOはこの日のために階段登りのトレーニングを続けていた。11階建の階段を二段跳ばしで登り降りするのだ。一本で約30メートルある。最初は三本登り降りすると足腰がガクガクしていたのだが、我慢して続けていくうちに五本、八本とできるようになり、最近では十本できるようになっていた。この成果がどれほど出るのか、気になるところでもある。
 当日は快晴、気温もちょうど良く、本当に素敵な登山日和になった。朝、六時に出発。高速入口で多少渋滞に引っかかったが、あとは順調で予定通り九時には瑞牆山荘に着いた。この辺は隠れ観光地とでも言おうか、いわゆる主流から一歩外れた静けさがある。派手なお土産屋もなく、登山愛好者のための施設がこじんまりと建っている。駐車場は広いが、車は十数台、ポツンポツンと停まっているだけである。いよいよ登山の始まりである。同じ頃男十人ほどの登山者が着いた。彼等とはずっと抜きつ抜かれつ一緒に登ることになった。
9:00
 歩きはじめはゆったりとした坂で、大きな楢の木などに感動しながらのんびり登っていたが、すぐに急な坂道になる。比較的大きな岩が点在していて、これが瑞牆なのか……、と思いながら登っていく。林道を横切ると坂はかなり急になり、今までの登山道の中でも険しい部類に入る。ハーハーいいながら30分ほどで休憩場所に着いた。先ほどの一団が休んでいる。目の前の林の向こうに瑞牆山の全容がかいま見えた。「オオー、凄い、」思わず息子と二人で声を挙げた。横にいた一団の年長らしい人が笑いかけてきた。どちらへ行くのですか、と聞かれて、今日は瑞牆、明日は金峰山に行くと言ったら顔をしかめて「こっちから金峰に行くのはやめたほうがいい、」という。「とにかく最低ですよ、いいとこなんかなにもない。」よっぽどひどい目にあったらしく、絶対に止めろというのである。実はこのルートはIZUMO氏も諦めたほどの難所なのである。GIZUMOとしてはそこを制覇してなんとかIZUMO氏の鼻を明かそうという野望を持っているのだ。今日の瑞墻山の具合によって腹を決めるつもりでいるのだ。だからこのアドバイスがかなり気になってしまった。いったいこの先どんなことになるのだろう。
 一団に先駆けて歩き出した。その先もけっこう急な勾配が続く。いつもの山とは違って道には大きな岩が点在している。その岩の横を登っていくのだ。20分ほどで富士見平小屋に着いた。かなり体力を使う道だ。大きな看板がある。ここが瑞牆山と金峰山との分岐点なのだ。小屋は閉まっている様子で人気はなかった。しばらく休んで息を整えてから瑞牆に向かって進んだ。
10:00
 富士見平からの道に入ると、今までとは違って石が転がった登山道が続く。足下をとられてとても歩きづらい。しばらく緩やかな登りが続くのだがすぐに急な下り坂になる。オイオイ、どこまで下るんだよ……、と思うくらい急な下りが続くと、やがて川のせせらぎの音が聞こえてくる。いったん沢に下って、そこから登るのである。天鳥川というこの小さなせせらぎは柔らかい日だまりの中で天国のような穏やかさを見せている。急坂下りの疲れを癒すために川岸で腰をおろした。手を水に浸すと切れるほど冷たい。富士見平で抜かれた一団の人達が先で腰を下ろしていた。今度はこちらが先に腰を上げた。いよいよ瑞牆山本体に登るのだ。
10:30
 川から少し行くと巨大な岩が眼前に迫る。高さが15メートルくらいあるだろうか。「これは桃太郎岩というんだよ。」一団の中の一人が教えてくれた。岩の頭からきれいに二つに割れているのだ。「ここから桃太郎が生まれたんだ。」なるほどそんな感じである。そしてその岩の横から凄まじい登りが続くのである。
 いったいどこをどう登ればいいんだろう、という道が次々に現れてくる。階段、というより梯子が掛かっている岩をよじ登り、ロープを手繰って岩を這い上がる。倒れた大木の下をかいくぐり、割れた大岩の横をすり抜ける。そしてこれがまた凄い登りなのである。階段登りのトレーニングがなければすぐに膝が上がらなくなっていただろう。その反面、登るピッチは早い。夢中になって登っていて、ふと後ろを向くと驚くほど上にいるので嬉しくなってしまうのだ。「オオ、スゲエ、」息子が声を挙げた。眼前に巨大な岩が立ちはだかっているのだ。高さは多分30メートルくらいあるだろう。大湯のストーンサークルの立石を巨大化したような岩の真下に出たのだ。「スゲエ……、」GIZUMOもそう呟いてしばらく言葉が出なかった。自然の作ったオブジェなのか、はたまた超古代文明の遺跡なのか。とにかく説明不可能な巨大な岩が立っているのである。そしてそのほぼ真下に自分達は立っているのである。
11:30
 とりあえずそこで一休みすることにした。よく見ると岩の向こうに瑞牆の山頂が見える。ゴールが確認できたのだ、あと少しである。GIZUMOは実は頂上にちかずくにつれて元気が出てくるように感じていた。息子ほど若くはないので、確かに「ハー、ハー」息があがるのは早いのだ。しかし、息が上がってから割と一定のペースで頑張る、持続力がついてきたように思うのだ。そして心なしか疲れが消えていくような感じがしていた。これがゼロ磁場の効果なのか?。
 しかし山頂に近くなるにつれてやはり疲れはピークに達していく。いつも山に登るとそうなのだが、山頂寸前というのが一番きつい。たぶん、ゴールが見えて気が緩むからなのだろう。瑞牆の岩に登るところは階段やらロープがあって、それまで難なくこなしてきた同じようなルートがとても辛く感じてしまった。
12:00
 息を切らせながら瑞牆山頂に立った。眼前にパノラマが広がり、思わず「ウォーッ!」と声を挙げてしまう。正面に南アルプス、富士山がくっきり見える。左には金峰山はじめ奥秩父の山が連なる。右には八ヶ岳がこれまたくっきりと、まさに絵のように見える。あそこが清里、野辺山と追っていくと、佐久の向こうに北アルプス、白馬まで拝めるのだ。今日はラッキーだとつくづく思った。
 一巡りすると岩の上に腰をおろして息を整えた。先客は男女二人づつ四人いた。ちょうどお弁当が終わったところらしい。しばらくビデオを持って駆け回っていた息子も腰をおろした。我々もお握りを食べることにした。いつも思うのだが、山頂で食べるお握りはなんでこんなに美味しいんだろう。天気も良く、暑くも寒くもない、風もなく空気が澄んでいる。GIZUMOはTシャツ一枚になって汗を乾かした。その頃例の一団も到着。山頂が一気に賑やかになった。


 一段落していよいよ山頂を調べることにした。山頂には大きな丸い方角表があり、その上に立って書かれている方向を見るとその山がどの山だか分かるようになっている。早速台に乗って金峰山を確認する。
 金峰山の五丈岩は思ったより遠くに見える。それだけ遠くにある、ということだ。明日登る予定のルートを目で追ってみる。森が続く、その中間辺りに大きな岩が見える。それが大日岩だと思う。その先は急な崖になっていて、巨大な岩のピークが三つほど見える。その先に五丈岩があるのだ「あそこが難所だな……、」心の中で確認する。
 五丈岩から左に目を向けると遥か向こうに同じような岩が見える。地図で見ると国師岳方向だがはっきりとは分からない。瑞墻山から金峰山に続くラインと、その未確認の岩を結ぶ三角形の中の地帯には稜線に沿って巨石が規則的に配置されているように見える。GIZUMOは巨大な電波望遠鏡を連想してしまった。全てが人工的とはいえないが、自然の状態をうまく利用した巨石文明の跡ではないかという印象を強く持った。


 さて、それからも私と息子はビデオを持って山頂を飛び歩いていたのだが、下の巨大ストーンサークル状の岩を写そうと岩の端に来たときその高さに足がすくんでしまった。急に立っているのが怖くなって、腹這いになって下を覗いた。知らずにいたということはかくも恐ろしいものなのである。


 「ゼロ磁場地帯」「気」についてはよく分からない。意識が山を登ることに集中して、肉体もそのことに緊張していたからかもしれない。ただ、頂上付近、巨大ストーンサークル状の岩、(たぶん「ヤスリ岩」と呼ばれていると思うのだが、)付近では厳しい登りだったにもかかわらず身体がかなり楽に感じたのは確かである。それが言われている「気」の効果なのかは分からない。
 また、山頂に立っていて、特に「気」がひしひしと伝わってくる、という印象はなかった。しかし、それは逆に巨大な「気」の中に入っているからこそ気が付かない、ということかもしれない。どちらにしてもこの点についてGIZUMOは答えることはできない。


13:00
 約一時間、山頂で過ごした我々は一団に先んじて下山することにした。息子が私が持参したストックを貸して欲しいという。ちょっと膝に不安を感じているようだ。今登ってきたルートの険しさを考えると賢明なことだと思う。GIZUMOも全く不安がないわけではないが、どうやら階段登りの効果もあって膝はぜんぜん痛まない。また、階段登りと同時に二段飛びで下るトレーニングもしていたので、膝はだいぶ鍛えられているように思う。とにかく行くだけ行くのである。
 下山もかなり厳しいものである。ただ、登ってきた同じルートなので記憶に残っている分、後どのくらいか分かって気持ちが楽である。15分ほど下ったところでまだ小学生くらいの女の子が登ってきた。これは驚いた。小さな子供にとってはルートになっている岩の大きさがもっと大きく見えるだろう。たいしたもんだ、と感心してしまった。
 一時間ほど下ったところで小休止。なかなか川原に着かない感じがする。こんなに長かったのか。そうこうしていると例の一団が追いついてきた。我々と同じところで小休止をとる。「膝が笑ってるよ、」などという声が聞こえる。確かに凄い下りである。再びGIZUMO達が先に発った。15分もすると川原に着いた。ここでまた小休止。ここまで来ればそう厳しいところはない、という安堵が出てくる。しかしここから富士見平らまでは登り返しがある。来たときはかなり急な下りに感じたから馬鹿にはできない。実際登ってみるとここも急である。ただ、瑞牆山を経験したあとなのでルートが短いぶん楽に感じる。
14:30
 ようやく富士見平小屋に到着。大きな地図が書いてある掲示板を見ながら、「明日はここから金峰山に向かうんだぞ、」と息子に告げると、「もう無理、明日は絶対無理、」と言い出した。「だって今日の倍以上あるんでしょ、」と来た。確かにそうだが、行って行けない距離ではない。しかし息子の様子を見ると断念せざるを得ない感じである。「よし、じゃあ明日は大弛から行くことにしよう。」ということで話がついた。IZUMO氏が断念したコースをぜひとも制覇したかったのだが、今回は諦めることにした。とても残念なり。
 ここから駐車場まで、約一時間の下りなのだが、思ったより険しいのだ。天鳥川を過ぎてからの登りがあまりに厳しかったのですっかり記憶が飛んでしまったらしい。駐車場近くになってようやくなだらかな道になった。「こんなに険しかったっけ……、」GIZUMOはブツブツ言いながら歩いていた。以前のように膝が痛むことはないのだが、全身、特に腰が痛い。
15:30
 駐車場に到着。念願の瑞牆山を制覇した。二人ともかなり疲労している。息子はストックを使っていたので私よりは楽だったようだ。GIZUMOは体中痛くなってきた。ぎこちなく着替えを済ませた。息子の運転で増富温泉まで戻り、日帰り温泉の「増富の湯」に行った。ここは鉱泉で、源泉は32度と低い。このぬるい源泉に15分ほど浸かってから普通の水の風呂に入って暖まるのだ。GIZUMOは壁に書いてある筋肉痛コースに従って入った。はじめから熱い湯に入る、というのではないのでちょっと勝手が違う。源泉に浸かったあとの熱い風呂が一番心地好かった。
17:00
 この日の泊まりは瑞牆リューゼンヒュッテという公共の宿。客は我々だけらしい。宿は広大で部屋はロフトがある。息子とGIZUMOはワープロとパソコンを持ち込んで、その日のうちにリポートを書くつもりでいた。しかし六時に食事をとって、ビールなどを飲んだGIZUMOは疲れきってしまってそのまま寝てしまった。就寝、19:00。

 翌日は5:30に目が覚めた。コーヒーなどを飲みながらワープロ打ちなどで時間を過ごした。息子がすぐに目を覚ました。夕べは息子も8:30には寝たらしい。ここは携帯が圏外になってしまってやることが何にもないので寝てしまったという。この日は瑞牆方面からの金峰山登山を諦めていたが、大弛まで回り込まなければならないので朝食後すぐに出ることにした。
9:00韮崎−10:00牧丘、恵林寺、そこのコンビにで昼食を買って大弛に向かう。牧丘町のルートがちょっとややこしいが無事通過。ぐんぐん登っていく。この道は工事中なのか上からダンプがものすごい勢いでやってくるので緊張の連続である。途中通行止めの看板があったが、とりあえず進んでいくと大工事中であった。そろそろと登っていくと誰も注意しないので、工事関係者のような顔をして通り抜けてしまった。外を見ていた息子が「風が強いよ、寒そうだな……、」という。下界は暑いくらいなのだが、登れば登るほど雲に近くなって寒々とした感じになってくる。「あれが金峰山だな、」ちょうど金峰山の頂上付近から雲に隠れてしまっている。昨日とは打って変わっている。車がたくさん駐車している一角に出る。そこが大弛峠だった。「ウー、さむぅー!、」ドアを開けた息子が叫んだ。車を降りるとまるで冬の空気なのである。
11:00
 大弛峠は雲の真下である。風が強い。金峰まで行き帰り五時間の行程。順調に行けば四時には帰ってこれるのだが、いかんせん20メートルも登れば雲の中に入ってしまうし、この寒さである。逡巡していると、昨日瑞牆山ですれ違った初老の人に出会った。彼は一足先に金峰に登ってきたという。「イヤー、もう烈風で立ってられませんよ、」やめたほうがいいと言うので今回はパスすることにした。しかしせっかくここまで来たのだからこのまま帰るのは悔しい。というので15分ほどで行ける「夢の庭園」というところまで行くことにした。いちおう弁当を背負って二人で登り始めたのだが、ちょうど遊歩道の工事をしていてたくさんの人達が階段に材料である材木を担いで昇っている。こんな日に申しわけないような気もするが、その横を通り抜けて登っていく。
 「夢の庭園」は瑞牆山ほどではないが山頂に大きな石が並んでいる不思議な空間である。景色が良く、長野、山梨方面がよく見える。陽があたって暑そうだ。しかし頭のすぐ上は雲。正面の金峰からは雲がこちらに迫ってくる。とにかく風が強い。立っていると耳がちぎれそうに痛くなる。飯を食うなどとんでもない。二人で記念写真を撮るといそいそと退散することにした。
 結局その日は温泉にも入らず帰宅することにした。非常にもの足りない感じで身体がなまるが仕方がない。しかし昨日の疲れがあるといえばある。二日続けての登山はまだ早いのかもしれない。帰りは息子が運転したので車窓から景色を楽しむことができた。たった一日なのに峠付近はすっかり秋の様相である。紅葉もボチボチ始まっている。季節の変わり目に立ち会ったようだ。
15:00
 無事帰宅。

 念願だった瑞牆山登山、金峰にいけなかったのは残念だったがあのものすごい登りを制覇した達成感はかなりある。例の「ゼロ地場」については何とも言えないのだが、あの付近が超古代のなんらかの遺跡である、という印象は強くした。金峰山方面からの眺望も確かめてみたい。そう考えるともう一度、大弛方面からでも金峰山に挑戦してみたいと思う。

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