私の友人でエロオヤジのKONISHIとOJIMAが突然山に行きたいと言い出した。二人とも付き合いといえば神田、神保町だの新宿歌舞伎町がほとんどで、話題も女がらみのことばかりで、いわばGIZUMOの悪友なのである。ところが最近GIZUMOが痩せたのを見て、自分達も山に登れば同じように痩せるのではないか、と考えたらしい。とにかく連れてってくれの一点張りである。
二人ともGIZUMOとほぼ同年輩で、まだ金のかかる子供がいる。そして二人とも最近、異常に太ってしまったのだ。OJIMAはGIZUMOと同じMAX83キロまでいったという。現在は78まで落としたというがまだまだ太り過ぎである。KONISHIは体重こそ73キロほどだが、長年の贅沢が祟って痛風になりかけているらしい。どちらも健康に対しては女遊びと同じくらい真剣なのだ。
いろいろと考えた結果、GIZUMOは三頭山を選んだ。ここなら山らしい山だし、IZUMO氏の言っていた巻き道ルートを使えばそれほど辛いところもない。コースタイムも全部で三時間くらいだから時間の余裕もとれる。そしてお気に入りの数馬の湯にも寄れる。
2004.06.18.立川駅に九時に集合。GIZUMOの車で奥多摩に向かうことになった。GIZUMOは誕生日に息子にプレゼントしてもらったリュックを初めて使う。二人は非常に軽装である。コンビにで食料を調達。なんとOJIMAはビールなどを買っている。「頂上で飲むんだよ、」などと言いながら「でも、あったまっちゃうからなぁ、」など後部座席で飲んでいる。「このヤロー、山をなめてんな…。」とGIZUMOは思ったのだが、そういえばGIZUMOもベロンベロンで高尾から城山、相模湖駅まで行ったことがあるので強くは言えない。
KONISHIはなかなか話好きで話題も豊富である。女のこと、サイドビジネスのこと、家庭のこと、病気のことなど話題は尽きない。五日市辺りで後ろがあまりに静かなんで振り向くとOJIMAは高鼾でねている。マ、昨日は仕事だったから寝させておこう。それにしても大丈夫かなぁ……?
予定通り十時半頃に都民の森に着いた。OJIMAを起こすとキョトンとしている。GIZUMOが準備しているあいだ二人ともトイレなどいってのんびりしていた。いよいよ登山開始である。
このルートは最初の歩道歩きが一番きついのだ。そのことを教えながら歩き始めたのだが、ものの三分も行かないうちにOJIMAが休憩したいと言い出した。「ダメ、今歩きはじめたばっかりでしょ、」KONISHIもフーフー言っている。「山歩きは、ハーハー言い出してからの勝負なんだからね。」などとGIZUMOはいつになく厳しく二人を誘導したのであった。
スポーツ歩道を過ぎ、鞘口峠への巻道に入るとようやく山道になる。KONISHI、OJIMA、GIZUMOの順に登っていくのだが、前を歩くOJIMAから強烈なアルコール臭が漂ってきてかなり不快である。「こいつ、よく歩けるなぁ…、」と感心しつつ注意を払わなければならない。なんてこった!
それでも三十分ほど頑張るとスポーツ歩道の終わりにある休憩所に出た。ここで一休みすることになった。みんな腰を下ろしてフーフー言っていると、休憩所のおじさんが出てきていろいろ話をしてくれた。KONISHIはどうも人から声をかけられやすいタイプなのだろうか、子供が迷ったときのことなど長々聞かされている。GIZUMOは鞘口峠からの巻き道を確認したりしていた。
そこから一登りで鞘口峠である。ここからきついルートをとるか、巻道をとるか選ぶことにした。きつい方は以前K氏やO氏が顔色が青くなって挫折したルートであることを告げると、一も二もなく巻道に決定した。実はこの巻道はGIZUMOも初めてなのである。又々KONISHIを先頭に歩きはじめた。
KONISHIは普段も自転車に乗っているので運動の体力はあるのである。OJIMAも基礎体力はありそうながっちりした体格をしている。ただ、ビールを飲んでいる分遅れがちである。かなり汗をかいたようで、OJIMAから次第にアルコール臭が無くなってきた。「すっかりビールが飛んじゃったよ、」などと言いながらもそれほど休みたいといわず登り続けている。確かに楽といえば楽な道である。やがて三十分も歩くと休憩所に着いてしまった。
ここで再びリュックをおろして休憩。KONISHIが我慢できないといってヤキソバパンなどを食っている。最初に来たときはここでK氏とO氏の顔色が黒くなって下山したのだ、と話すと二人とも大喜びである。「でも、きつい方のルートだったら私等も顔色が黒くなってたね、」とKONISHIは殊勝である。ここから先はもうたいしたことはない、と二人を則して出発した。
GIZUMOが一人で登ったときは確かにたいしたことない、と感じたのだが、それはあのきついルートをこなした後だったからかもしれない。ここから山頂迄は一部、ちょっとだけきついところがある。それも見上げれば鞍部が見えるほどだからたいしたことはない。だが初めてのKONISHIとOJIMAにとってはかなり辛かったようだ。「なんだよ、たいしたことないなんて言って、」とKONISHIがブツブツ言う。「なにを言うか、たるんだ君達にカツを入れるために来たんでしょ、」とGIZUMOが言い返すと渋々登っていく。「君達にギャフンと言わせてやるつもりだったんだから、」なおも攻めると二人は「ギャフン、」といってきた。アア、愉快愉快。
それでも三十分もしないで山頂である。アー、やれやれ、といった感じで到着した。山頂にはポツポツと先客がいる。とりあえずリュックをおろして一休み。十二時半頃なので弁当にすることにした。この日、GIZUMOは大食漢の彼等のために少し多目におかずを買っておいた。卵焼きと鳥のチーズ揚げ、どちらもビールのつまみみたいなもんだ、それから大きなオシンコ、もちろんそれぞれお握りなど持参である。アーダコーダ言いながら食べるのだが、さすがに二人はぺろりとたいらげてしまった。太るはずだわ……。

さて、小一時間遊んで、記念写真など撮ると午後の一時半を回っていたので下山することにした。三時には戻る予定である。KONISHIが先頭で下り始めたのだが、以外にペースが早い。真ん中のOJIMAはかなり慎重なので差がついてしまう。「あんまり飛ばすと膝に来るぞ、」と何度言っても聞かない。KONISHIは自分のペースでいってしまう。しかし十五分もすると「駄目だ、膝が笑いはじめた。」といってペースダウン。「だから言ったでしょ、登山ではね、下山の時のほうが事故が多いんだよ。もっと慎重にいかなきゃ。」今まで何度もIZUMO氏に言われたことを今度はGIZUMOが言い聞かせている。因果は巡るのである。
ムシカリ峠で左に折れて急な下りをいくと、下から何人も登ってくる。「あとどれくらいですか、」と聞かれる度にKONISHIは「そうですね、かなりきついですよ、」などと答えている。それでも三十分くらい頑張って休憩をとった。OJIMAもかなり苦しそうである。「やっぱり下りの方が辛いね、」などとほざいている。下から登ってきた年配の女性がKONISHIに話しかけている。クドクドと長くなって、KONISHIもちょっと困った顔をしている。GIZUMOは面白いのでしばらくKONISHIの困った顔を観察して腹の中で笑っていたのだが、あんまり長いので「まだ先は長いから、頑張って、」などといって治めてしまった。又々二十分ほどいくと渓流に木漏れ日がもれる気持ちの好い場所に来たので又々休憩をとることにした。OJIMAはかなり辛そうである。KONISHIも口数が減ってきている。こんな気持ちの好い場所で昼寝ができたらなぁ…、と話し合った。ほんとに気持ち好いだろうなぁ……。
そこから又々頑張って二十分ほどで大滝にきた。ここの休憩所に入るとOJIMAはそのままゴロリと横になってしまった。まだ時間に余裕があるので、あんまり気持ちが好いのでGIZUMOも一眠りすることにした。KONISHIも横になっているがねてはいなかったようだ。ハッ、と気がつくと四十分くらい経っている。気持ちよく寝てしまったらしい。「どうする?……、」KONISHIが声をかけた。「そろそろ行きますか、」GIZUMOがOJIMAを揺さぶって起こすと、「オオ、」といって驚いたような顔をして目を覚ました。「おれは今どこでどうしているんだろう?。」という顔である。こういうのはGIZUMOも好きである。
滝のところで記念写真など撮って、気持ちの好い遊歩道を歩くとすぐに都民の森に着いてしまった。ここで施設を見学したり、OJIMAはトイレに駆け込んだりして時間を潰し、四時半に出た。数馬の湯は我々が入るときに同時に何人か入ってきて、いつものような貸切り状態とはいかなかったが、相変わらずこじんまりとして気持ちが好い。OJIMAはもう少し
広い方がなぁ…などと不満げである。しかしGIZUMOとOJIMAがゆっくりしていたら、けっきょく我々の貸切り状態になり、大満足でプカプカ浮かんでいた。風呂上がりには食堂でGIZUMOは久し振りにチョコレートパフェなどを食ってしまった。痛風がやばいKONISHIは「チキショウ、」と言いながらそれでもOJIMAと一緒に蕎麦と鉄火丼のセットを食べている。どこが摂生なのかなぁ?。その上OJIMAは又々ビールを飲んでいるのだ。こっちがチキショウ、である。
ああでもないこうでもないと言いながらも、七時には立川に無事到着した。この二人はひょっとしたらここから夜の町に消えていきそうな気配であるが、とにかくもこの不健全な二人に山の良さを少しでも伝えられたかな、と思いながらGIZUMOは別れたのだった。夏場にかかってしまうのでしばらくは無理だが、高尾山のビヤホールくらいにはまた一緒に行こうということで別れた。このくらいの山で痩せるなんて思うなよ、と二人の背中に言ってやった。

