
2004,05,10−11、IZUMO氏とK氏と草津に行く。今回はK氏の関係のリゾートマンションを使わせてもらうことになった。山の方はIZUMO氏が白根山登山の計画を立ててくれている。「今回は飲み食いが中心で、山は散歩程度ですよ。」というのでかなり気楽である。GIZUMOは完全に二人にお任せで、朝から水筒に焼酎のお湯割を入れてチビチビ飲んでいたのであった。
十時にIZUMO氏の車で出発。この日はあいにくの天気で小雨が降っていた。明日は晴れるというのでそれに期待して出掛けたのだ。滝山街道を通って日の出ICから県央道、関越で草津に向かう。運転はK氏。K氏はGIZUMOと違って運転が大好きで自らも愛車のベンツを繰ってしょっちゅうドライブしている。ところがどういうわけか時々妙な運転をする。今までも目的地を無視してどこまでも直進してしまったことがあった。近道でも知っているのかと思ったらそうでもないのだ。ある意味おおらかなんだろうが、知らないで乗っていると吃驚するような思いも寄らない行動に面食らうのだ。
この日も滝山街道、サマーランド前の交差点を道なりに右に行くのだが、突然右折車線から左に行こうとハンドルを切るのだ。「オアーーッ!、どこ行くのぉーっ!、」というGIZUMOとIZUMO氏の声ですぐにググッと戻ったのだかどうしてそんなことをするのか本人にもよく分からないらしいのだ。確かに左に新しい道ができているのだが、このルートはなんべんも通っていてよく知り尽くしているはずなのに、なにか勘違いでもしたのだろうか。そして、この行動がこの旅のK氏の運命を変えてしまったのだ。
車に乗る時はだいたい席が決まっている。K氏とIZUMO氏は交代で運転するので前、GIZUMOは後部座席に座る。O氏が加わる時はもちろん彼も後ろである。だからGIZUMOはいつも後ろから前の二人の会話を聞いているのだ。IZUMO氏もK氏も車が好き、という共通点があるのでどうしてもそっちの話題が多くなる。GIZUMOは車には詳しくないのでそういう時は黙って聞いている。IZUMO氏はとにかくデータ中心の会話である。カタログ雑誌を隅から隅まで読んで細かい数字をドンドン口にする。K氏は同じように車が好きだがもう少し情緒的なのである。「うんうん、分かるよ、」などとなま返事をしている。IZUMO氏はそんなK氏を疑うこともせず、怒濤の如く数字を並べたてて車の解説などをしていく。GIZUMOはそんなK氏をちょっと可哀相に思ったり、やっぱり可笑しくなってほくそ笑んだりしている。そっちに気を使うので変な運転になってしまうのかなぁ……。
さて、GIZUMOが後部座席でチビチビと焼酎のお湯割を飲みながら丁度気持ちの好い酔いを持続させている間に車は渋川伊香保で関越を下りて町中に入った。そこで大きなスーパーを見つけて今夜の食い物の買い出しをするのだ。ここでもIZUMO氏とK氏のドジなやり取りを楽しみながら田舎の町の風景を楽しんでいた。やがてかなりでかいスーパーをバイパス沿いに発見。いよいよ買い物となった。
GIZUMOは現在ダイエット中なのでたいして食に興味はないのだが、二人は物凄い食いしん坊である。その上IZUMO氏は肉もデータで調べるのである。なんとかならないものか…。とにかく肉と酒をたっぷり買いこんだ。GIZUMOはサラダと豆なども買い足しておいた。ここでいくら買ったのか当てっこをすることになった。GIZUMOが驚異的な直感を働かせて9600円とズバリ当ててしまったのだ。IZUMO氏が納得できないなぁ…、と首を傾げている。ま、これが超能力というものですよ。
四時頃に草津のマンションに到着。かなり大きな建物で恐縮してしまいそうである。とにかく入口からはいったエントランスが吹き抜けで巨大である。なんとなくバブルの面影を感じないでもないが……。部屋は2LDKだがかなり広い。ソファにゴロリと横になるとGIZUMOは動くのもいやになってしまう。外はまだ小雨が降っていて肌寒い。「せっかく来たんだから草津の町に行きましょう。」IZUMO氏が一人気を吐いている。GIZUMOも少し休むと元気が出てきたので出掛けることになった。
草津は何度も来ているK氏が運転しているのだが、どうも頼りないのである。「いつもはここに停めて歩くんだよね。」と町外れの駐車場に入れようとするので「ダメだよ、雨が降ってるんだからもっと中心まで行こうよ、」と拒否。IZUMO氏も「なんとかなりますよ。」と急かす。K氏は困ったような感じでハンドルを回すのだが、GIZUMOやIZUMO氏が「左、」「右、」と言わないとどうしても真っ直ぐ行ってしまう。
町の中心まで行くと道はかなり細くなってしまう。車がやっと一台通れるトンネルの前では、K氏はにっちもさっちもいかない雰囲気になってしまった。「大丈夫だよ、絶対抜けられるから。」と後押ししてようやく抜けると、「そこの細い路地を下りてみよう。」とGIZUMOが指示。ようやく湯畑に出られた。道を下りたところに駐車場がある。「ほーら、こんな近いところに駐車場があるじゃない、」GIZUMOの言葉にK氏は「うん、そうだね…、」首をすくねるばかりである。
グルリと湯畑を回ってお土産やなどを見ているとK氏が「歩いてるとお饅頭をいくつも食べさせられてしまう通りがある。」というので行くことにした。「えー、と、こっちだったかなぁ……。」K氏が頼りなげに案内していく。すると最初の駐車場に抜ける道の途中に数人のおじさん、おばさんがお盆の上に饅頭を乗せて路行く人達に勧めている。面白そうなのでちかずくと「食べてって、」ときた。ホカホカのまだ熱い饅頭とお茶を御馳走になった。K氏の話だとこの通りは何軒もお饅頭屋があってもっとたくさん人が饅頭を食べさせにくるのだそうだ。この日は平日の夕方ということもあって一軒だけだったのかもしれない。確かに勧められるけどK氏の言うように「断り切れなくて三つも四つも食べさせられてしまう、」というのはどうかと思う。もっともK氏は食べちゃうのかもしれないが。
一通り見物したので帰ることになった。さっきの饅頭屋の通りはマンションへの最短ルートである。IZUMO氏が「車で通っても饅頭を食べさせられるんですかねぇ、楽しみだなぁ、」などとK氏をからかい半分に言っている。GIZUMOも「あんな狭い、人がウジャウジャいるとこ通れてK氏はいいなぁ、」などとチクリと言ったりしていた。「もう、やなこと言うなぁ、」とK氏はしょげ気味である。さて、いよいよ饅頭屋の細い道に入る、その瞬間である、K氏はなにも言わずハンドルをグイッ、と左に切ってしまった。「オワワワッ!!」GIZUMOもIZUMO氏も度肝を抜かれてしまった。「どうしたの!?」IZUMO氏の叫びにも「うにゅーー、」とK氏は声にならない。「これじゃさっきのトンネルに出ちゃうよ、あそこ嫌だったんじゃないの。」GIZUMOの声にもK氏は「うにゅにゅ……、」と口ごもるばかり。トンネルを抜けるとやっと広い道に出て、「あっ、ここを右に行けば帰れるじゃん、」とやっと明るい声を出した。そのあまりの可笑しさにIZUMO氏はゲラゲラ笑い出してしまった。GIZUMOも「どうしたの?、いやならいやって言えばいいのに、」と笑ってしまった。「いやー、どうしたんでしょうね……、」K氏の言葉に「手が勝手に動いちゃったんですかぁ?、」とIZUMO氏は笑いが止まらない様子だ。「いいじゃないですかぁ、帰れるんですからぁ、」K氏が言えば言うほどGIZUMOとIZUMO氏は笑いが止まらなくなってしまった。
さて、そんな出来事がありつつ今度は風呂に入ることになった。このマンションは温泉付きのリゾートマンションで、一階に大きな風呂場がある。もちろんお湯は本物の温泉である。この日はどうやら我々の貸切りだったようで、100人くらい優に入れそうな巨大な浴槽を独占で使うことができた。あまりの大きさに声が反響してしまって、ちょっと離れるとなにを言っているのか聞き取れない始末である。お湯も柔らかくで好い。熱いのと温いのと二つあって、どちらも泳げるほど広い。ここなら女の子のヌード撮影ができちゃうね、などとGIZUMOはあらぬ空想を膨らませたのであった。
夕食は例によって焼肉なのだが、この日ばかりはIZUMO氏が酔うほどにK氏の運転をネタに笑いに笑って面白かった。K氏もまた変な言い訳をするものだから可笑しさが倍増してGIZUMOも思わず笑ってしまった。GIZUMOとIZUMO氏にとっては楽しい食事だったが、K氏はちょっと気分が悪かったかもしれない。調子に乗って飲んだGIZUMOはいつもの如く一足先に眠りについてしまったようだ。
翌朝は五時頃目が覚めたので一人で朝風呂を浴びにいった。天気は回復している。浴槽からぼんやりと外を見ているとセキレイが一羽大きな木の枝で遊んでいる。GIZUMOはこういう時間が大好きである。なにも考えずにぼんやりしている。30分ほどそうしていた。風呂からあがると散らかしっぱなしになっている部屋の片付けをはじめた。七時過ぎにようやく二人も起きて風呂に行く。GIZUMOは布団をたたんだりしていた。風呂からかえると「すいませぇーん、」と言いながら二人も片付けに加わった。K氏がインスタントラーメンを作ってくれた。家ではめったに炊事などしないのになかなか堂に入っている。
又々K氏の運転でいよいよ白根山に向かった。空は晴れて青空が広がっているが白根山付近にはまだかなり雲が残っている。車が高度を上げていくと風景は一変して高原のムードになっていく。車窓から見える湿原、展望を楽しんでいるうちに湯釜下の駐車場に到着。外に出るとかなり寒い。風が強くてその分寒さがきつい。「さあ、ここから登りますよぉ、」IZUMO氏が張り切っている。GIZUMOも靴を履き替えて準備した。
弓池の横から逢の峰が見える。まずそこから攻めることになった。最初は調子よく三人とも登っていったのだが、すぐに雪に道を塞がれてしまった。「GIZUMOさんアイゼン持ってきてますよね、」とIZUMO氏。「散歩程度って言うから置いてきちゃった…。」ちょっと失敗したな、と思いつつK氏の足元を見たらなんとおしゃれなズックを履いている。「いやぁ、俺もなめてたかもしれないけどK氏はもっとなめてるよ、」「いにゃ、はにゃ、」又々K氏がわけのわからない言葉を発している。「じゃあ、ついてきて下さい。」しょうがねーなぁ、と言った顔でIZUMO氏が先頭に立って雪を踏み固めている。その足跡を慎重に踏みながらGIZUMOとK氏は続いた。逢の峰の山頂はすぐだった。しかし風が強くて立っていられないほどである。GIZUMOは耳が痛くなってきたのでタオルを巻いて凌いだ。休憩所付近で写真など撮りまくって戻ることにした。観光地とはいえ2000メートルの山を甘く見てはいけないという教訓であった。
ようよう下ると、IZUMO氏が腹が減ったというのでベンチで昼食にした。まだ風が強い。「本格的な山に行ったらこんなもんじゃないですよ。」とIZUMO氏。GIZUMOもそうだろうと思った。「散歩程度」という言葉に惑わされて完全に甘く見ていた自分に反省である。
とりあえず湯釜まで行くことにした。ここは駐車場から十五分ほど登ったところで観光客が多い。そんな中で軽装とはいえリュックを背負った登山姿の我々三人は異様であった。ドシの上塗りってやつです。
実は車の窓からぽつんと見える鳥居が気になっていた。そこは逢の峰からも湯釜からも見えるのだが全く人影がない。このまま帰るのも癪なので「あそこまで行ってみよう。」ということになった。ようやく元気が出てきた。
芳が平に向かう道のようだ。途中に大きな雪渓があったりして楽しい。道はほとんどフラットなので雪を甘く見ているK氏でも楽々である。二十分ほどで芳が平への道と分岐している。我々は鳥居を目指して右に進路をとった。
少し行くと大きな岩場に出る。そこから草津方面への展望は見事の一言で息を飲んだ。岩場も巨大で切り立っている。鳥居は草津から湯釜方面に向かって拝むようにできている。典型的な山岳信仰の社である。やっとここまで来た甲斐があるというものだ。湯釜方面への展望も素晴らしいものである。かなりインチキだが2000メートルの山の雰囲気は充分に楽しめた。ここでも写真を撮りまくって遊んでしまった。
さて、白根山で遊んだ我々はもう一度草津温泉に戻って大露天風呂などに入っていくことにした。K氏がこだわっていた大駐車場から西の川原公園を抜けて湯畑に下りていく。下界は晴れて温度が上昇、かなり暑い。この辺の風景は確かに面白いのだが、たった今雄大な風景を見てきたせいかどれも規模が小さく感じてしまう。例の饅頭屋の前を通ると再びIZUMO氏がK氏の運転を思い出して笑っている。「うーむにゃむにゃ、」その話になるとK氏の言葉がわからなくなる。それがまた可笑しいのだ。湯畑の横に「白旗の湯」という無料の温泉がある。これはかなり昔からあるもので、源泉そのものなのだと思う。どういう巡り合わせか、この日は温泉のメンテナンスの日でどこもお休みなのである。予定していた大露天風呂もやっていない。そこでGIZUMOがここに入っていこう、と提案。なんとなく薄汚い、小屋のような建物に二人は躊躇している。「こういうところに入っていくのが本当の通なんだよ、」と二人を即してGIZUMOが入っていく。中は五人くらい入ればいっぱいの木の浴槽が二つ。それほど広くない。そこに十人ほどの客がいた。脱衣場は三人も入ればいっぱいと狭い。さっさと服を脱いでGIZUMOが湯に入った。これがとんでもなく熱いのだ。歯を食いしばって入っていると本当に体の中からほかほかしてきて目茶苦茶気持ち良くなる。IZUMO氏もK氏も苦笑いしながら入ってきた。GIZUMOがもう一つの風呂に入っていると二人とも湯に浸かっていた。最初はいろいろな意味で敬遠していたが、やはりなんといっても「草津の湯」である。確かに気持ちがいいのだ。ただ熱いので長くは入っていられない。GIZUMOはさっさと上がって外で二人を待った。お決まりのソフトクリームが美味しいこと。ある意味、こういう方が本当に草津を楽しんだことになるのかもしれない。
この後はIZUMO氏の運転で軽井沢経由で帰路についた。途中軽井沢の手前で蕎麦を食べたのだが、なんとも不思議な味であった。その後はGIZUMOは例によってうたた寝をしていて気がついたら県央道を下りていたのであった。
今回の旅は遊び、という点では申し分なかったのだが、登山、という意味ではとても反省点が多いものだった。特に2000メートル級の山を全く知らないGIZUMOとK氏にとってはいい勉強になった。また、高級リゾートマンション貸切りの贅沢もなかなかできる経験ではない。正直いうとキューブリックの映画の「シャイニング」を彷彿させるものもあった。しかし、なんといっても今回の目玉はK氏の運転であった。GIZUMOでさえあんなに笑わなくてもいいんじゃない、と思うほどIZUMO氏は笑いが止まらないようである。GIZUMOとしてはかなりK氏に同情を感じてしまう。その証拠に最後に三人で草津で撮った記念写真を載せておこう。一番左のK氏は叱られた子供みたいな顔をしている。きっとこの時のK氏に絵を掻かせたら頭の凹んだうさぎとか蛙を書いたのではないだろうか。(親にバカと言われて育った子がよくこういう絵を描くらしい。脳みそがない、という意味で頭が凹んだうさぎなどを描くという。)もう、あんまり笑わないようにしよう。K氏、ごめんね。
というわけでGIZUMOは終止酔っぱらっていたということだが、やはりこういうことではいけない。もっとシャキッとしましょう!。


