
2007.10.30、中央線鳥沢駅のそばにある倉岳山に行った。前日、飲み会で帰宅したのが十時過ぎ、ちょっと体がだるかったが、どういうわけか「行かなきゃならん」という気持ちが強くて、朝六時に起きて出発した。
八時には登山道に着いたのだが、地図が大雑把で駐車場が分からない。ここで「帰ろうかな…、」という気持ちが湧いてきた。気持ちが乗らないのである。しかし身体のどこかがそれを全く無視して「行け!、」と言っている。駅前のコンビニで場所を聞いてようやく分かった。公民館の駐車場に車を停めて出発したのが九時ちょっと前。道の途中にある小さな神社に手を合わせて登山開始である。
しばらく林道を登ると左手に池が見えてくる。大きな石がゴロゴロしている歩きにくい道を登っていくと川に出る。しばらく川沿いに行くと川を渡って向こう側に出る。ところがこの日のGIZUMOはどうも変なのである。ここで道を誤って中州の方に行ってしまった。すぐにルートが違うのに気が付いて引き返し、元のルートに戻ったのだが、やはり判りづらいな、と思った。そして、今日は要注意だぞ、と自分に言い聞かせた。
十五分ほど登ると、お隣りの高畠山との分岐に出る。ここには小さな石仏がある。ルートを確認して手を合わせて通過。いよいよ本格的な山道になるのだ。
ここまで人の気配は無し。久し振りの単独の登山である。これはこれで良いのだが、やはり心細いものがある。この時期、熊などに遭遇したらどうしよう、などと心配もある。ま、滅多にないけどね。静かにしていると怖いので鈴を付けたりするわけだ。
ルートに合わせて二十分ほど歩く。そろそろ川を渡るんだけど…と思いつつ地図を見る。今回は慎重に歩いている。
更に十五分ほど行くと、道は次第に急になっていく。なんの考えもなく手を使って崩れそうな岩を避けながらせっせと登っていった。だいぶ登ってから下を見ると、「ウヒャアー!、」と声が出るほど急である。しまったなぁ、これじゃ戻れないぞ…、と周囲を見回した。「オヤ?!、」見上げるとそこには灰色の巨石が聳えていたのである。
「これは呼ばれたなぁ…、」と直勘した。どうも心の中で厭だと思いながらも、なにかに引き摺られるように登ってしまった。登ってみればルートを間違えて巨石の下である。余裕が無かったのでデジカメに収めて、とにかくどうしたらいいのかもう一度周囲を見回してみた。すると左側に誰かの靴跡が残っている。とにかくあの後を追って行こう、と歩きはじめた。
![]() 上方向。道がない… |
![]() 下方向。急勾配でずり落ちてしまう… |
ここからは道の無い山肌を足跡を便りにサバイバルのように登ることになった。左に回り込むと二つ目の巨石が現れた。上から見たらたぶん気が付かないだろう。そして三つ目の巨石の真下に辿り着いた。ここでどちらかに回り込むのだが下が岩なので足跡が見えない。右に行こうと思ったが、なんとなく直勘が左、と囁いた。こういう時はそれに従うことにしている。かなり急だったが登れないわけではない。上に出るとまた足跡が見えた。再びそれを追って登るのである。
十一時半、巨石から一時間ほど悪戦苦闘して尾根に出た。ここまで半ばパニックになっていたので休憩をとっていない。この尾根がどこなのかも判らない。座り込んで息を整えたが、どうにも落ち着かない。周囲を見回すとリボンが見える。そちらに向かって降りることにした。
二十分ほどでようやく道標に出会った。高畠山と反対は鳥沢駅となっている。どうも自分の方向感覚とは違うので戸惑った。高畠山のピークを踏もうかとも思ったのだが、こんなことがあったので帰った方がいいと判断、鳥沢駅方面に進んだ。
そこから三十分、必死で下ると、川沿いの分岐に出た。手を合わせた石仏があるところだ。「なるほど、ここに出たか」。自分が通ったルートがだいたい判った。やれやれである。
そこからは今日の出来事を頭の中で整理しながらゆっくりと戻った。朝から行きたくないのに何故か来てしまったこと。川原でルートを間違えるなど、いつもと感覚が違ったこと。そしてなによりもどこからルートを間違えたのだろうか、等々。たぶんもう一度、今度は誰かと来たら、どうしてこんなところで間違えたんだろう、というような場所なのだと思うのだ。狐に摘まれたような気持ちである。
午後一時、公民館の車に到着。なんとか無事に生還した。そのあと秋山温泉にはいって身体をほぐした。考えてみたら弁当も食べていなかった。よっぽど緊張していたんだろうなぁ…。

さて、後日談だが、GIZUMOはこの山行きの詳細をIZUMO隊長に話した。隊長は実に冷徹に「あそこはそんなに難しいコースじゃありませんよ。どうやったらルートを外せるんですかねぇ。もっとしっかりしなくちゃ…。」と一言苦言を呈された。足跡のことにしても、「ああいう所では訓練の為に危険なところを登る人がいるんですよ。そういう人はザイルを持っていくけど、GIZUMOさんは持ってなかったでしょう?。」と剣もほろろである。
しかし普通に考えれば彼のいうことが正論である。すぐに巨石だの神様だのを持ち出すのは、実はGIZUMO自身が自分の犯したミスを誤魔化したいからではないのか?。そうとられても仕方の無いところである。
果たして真相はどうなのだろう。それはGIZUMOにも判らない。

