★足柄峠、金時山、金時娘に合いに行く。

2004.04.07

6:16南大沢−7:00町田−8:00新松田8:15−8:45足柄駅−10:00足柄古道・休憩−10:30足柄峠−11:15休憩−12:10金時山12:50−13:25うぐいす茶屋−13:45登山口−14:00仙石原バス停14:13−宮の下・温泉15:00−15:10登山鉄道−15:35箱根湯本−16:18ロマンスカー−17:18町田−17−50南大沢

 扇山、百蔵山行きから一日挟んで金時山に行くことになった。今回はいつもの「IZUMO休憩隊」とは別のグループで、GIZUMOも彼等と行くのは初めてである。メンバーはSHYUチャン、OB2さん、N嶋さん、そしてGIZUMOの四人である。最近GIZUMOが山にはまっているのを知って三人が誘ってくれたのである。
 SHYUチャンは40代になったばかりの山男で、若い頃はトライアスロンをやっていたという強者である。大きな荷物を背負って山にテントを張って泊まるのが趣味なのだが最近はとんと御無沙汰なのでハイキングで調子を思い出したいらしい。OB2さんも40代半ばというところでしょっちゅう山に登っているという。寡黙なところがあるのだが話出すとメチャクチャ面白い人物である。N嶋さんは一番若い30代半ばだがかなりの巨漢である。他の二人ほど山の経験はないようだが、何故か山登りに参加してきた。彼も寡黙な方でまだまだ分からないことが多いのだが、やはり健康を気にして歩こうとしているのではないか、とSHYUチャンは分析している。ということはつまりGIZUMOが一番年寄りなのである。足手まといにならなければいいが……。
 今回は帰りに一杯やりたい、と言う理由で電車で行くことになった。荷物を詰めていてGIZUMOははたと気が付いた。いつもは温泉用の着替えやタオルなど別に袋に詰めて車に置いておくのだが、電車だと全部リュックに詰めなければならない。履き替えの靴も持っていけない。余計なものは何一つ持っていけないのである。というわけで必要最小限のものをリュックに入れて用意した。
 早朝の南大沢駅に向かった。天気は上々である。「GIZUMOサーン、」駅前でSHYUチャンと合流。精悍な体をジャージで包んでいる。GIZUMO、ついて行けるのか!?。
 コンビニで飲み物と非常用のチョコを買って電車に乗った。次の駅でN嶋さんと合流。彼はリュックではなく首から提げる鞄一つである。まだラッシュではないが通勤通学の人が多い中、申し訳ないような気持ちで電車に揺られていた。町田でOB2さんと合流。いよいよ出発である。

 箱根行きの小田急線は思った以上に混んでいる。座るどころではない。厚木を過ぎてやっとみんなで座れたのだがすぐ降りることになる。リュックなど背負っているのは我々だけ、肩身が狭い。
 8:00、新松田に到着。乗り換えまでに少し時間がある。駅前は高校生がバスを待って犇めきあっている。我々は駅前の箱根蕎麦で腹拵えをすることにした。このパーティはまだなんとなく打ち解けていないのでバラバラで行動することが多い。いつもと勝手が違うのでGIZUMOは遠慮がちである。
 松田から足柄までの電車はいかにものんびりとしたローカル線の雰囲気で、ようやく山に行く気分が高まってきた。30分で足柄駅に到着。自分でボタンを押さないと開かない扉に気が付かず、危うく乗り越すところだった。N嶋さんが気が付いて助かった。

 無人の足柄駅で準備運動をしていよいよ出発である。いちおうリーダーはSHYUチャンで地図を見ながらルートを決めていく。
 8:45分に出発。足柄峠を目指した。しばらくは広い車道歩きが続く。この辺りも桜が八分咲きから満開で素晴らしい。天気も晴れてきて申し分なしである。ただっぴろい車道歩きが約一時間ほど続く。その間一台の車も通らない。長閑なもんです。ただ一つ気になったのはずっと聞こえている雷のような地鳴りのような音。「あれは自衛隊の演習の音ですよ、」とSHYUチャンが教えてくれた。十分置きにドドォーン、という音が腹に響いて不快である。なんとかならないもんだろうか。
 歩き初めて一時間ほどしてようやく「足柄古道」に入ることができた。ここで車道歩きから開放されて山らしい道を味わうことができる。休憩を挟んで30分ほどで再び車道に出てしまう。やがて右側に大きな石碑が現れたり、左側にお地蔵さんなどが見えてくると足柄峠はすぐである。
 N嶋さんが車道脇に遊歩道を発見。整備された遊歩道を登っていくと足柄峠に出た。正面に富士山が見事に聳えている。その下には御殿場市が広がっている。この景色は極上である。我々はここで記念写真など撮ってしばらく景色を堪能した。実はここまでは簡単に車で来ることができる。峠全体が公園として整備されていてとても気持ちの好い広場になっている。ドライブに来るのもいいかもしれない。山頂では年配の御夫婦がいて、どうやらスケッチをしているらしい。GIZUMOには絵の才能は全くないのだがこういう趣味も好いなぁ、と思った。

 このパーティの企画は主にSHYUチャンとOB2さんが相談してコースなど決めているらしい。ちょっと苦しくなるとSHYUチャンは「金時山の上には金時茶屋があって、そこには金時娘が待っているから……、」と叫ぶ。これは故あって一人暮らしをしているOB2さんに向けられているのだが、自分に対して言っている部分もある。彼等とGIZUMOの関係は実はソフト部繋がりである。このページの「ホニホニ日記帳」などでときおり話題になるソフトボール部の旅行で苦労を共にした仲間なのである。OB2さんによるとこのコースはSHYUチャンが「茶屋」があるから選んだのだそうだ。然もありなんとGIZUMOは思ったのだった。

 さて、ここから金時山ハイキングコースを辿って出発したのだが、やはり車道歩きなのである。どうも山の気分にひたれない感じである。しかししばらく行くと舗装がなくなりダートロードになっていく。普通の乗用車ではちょっときつい悪路である。これでようやく雰囲気が出てくる。ダラダラながら登りはきつい。30分ほどでGIZUMOが休憩を申し入れた。
 「アア、あれが金時山だねぇ……、」SHYUチャンが前方のピークを指差した。かなり高い、「あれを登るんですかぁ?。」N嶋さんがゲンナリした声をあげた。「そうだよ、あれを登るんだよ、」とSHYUチャンが気合いを入れる。確かに高い……、GIZUMOもちょっと気合いが入った。
 道が平坦になると、まっすぐ行った先に金時山が聳えている。標高差は200mほどあるか……、その道を歩きながら次第にピークにちかずいていく。まさか直登じゃないよな……、GIZUMOの頭に嫌な予感がした。
 ピークの麓には私設のロープウェイがある。その横にはランドクルーザーが一台停まっている。「ああ、ここから茶屋に荷物を運んでるんだよ、」とSHYUチャン。なるほどそうかもしれない。そこから始まる登山道は見上げるばかりの直登である。「心臓やぶりの登りだ……、」いつも寡黙なOB2さんが呟いた。
 GIZUMOは覚悟を決めて登り始めた。出来るだけ自分のペースを保ってゆっくり登り始めた。N嶋さんとOB2さんは早いペースで登っていく。SHYUチャンはGIZUMOの後ろに付いてくれている。道はほとんど階段状の崖登りである。今まで経験した中でいうと、十二ヶ岳の最後の直登に似ているかもしれないが、これはまたちょっと感じが違う。十二ヶ岳ほど険しいわけではないが、とにかく長いのである。ときおり上を見上げて息を整えなければならない。しかしなかなか終わりは見えない。後ろからSHYUチャンの荒い呼吸の音が聞こえてくる。
 15分ほど登ったところでSHYUチャンに言って一息付いた。OB2さんとN嶋さんは遥か先に行って見えない。上からはわりと頻繁に人が降りてくる。ほとんどが高齢の御夫婦で、こんな険しい道、大丈夫なのかな?、と思うようだ。
 一服したらかなり元気が出てきた。どうやら自動モードに入ったようだ。GIZUMOはグングン登れるようになってきた。少し登ると先に行ったはずのOB2さんとN嶋さんが息があがって座り込んでいる。「さあ、もう少しで金時娘に合えるぞ、」SHYUチャンが声をかけた。我々の姿を見ると二人は立ち上がった。結局GIZUMOが先頭に立って最後の登りに挑戦した。

 12:10、標高1213mの金時山山頂に到着した。山頂には大きな金時茶屋があり、そこを中心に机とベンチが整備されている。人も大勢いる。ヒーヒー言いながら登り着いた我々はベンチを一つ確保すると座り込んでしまった。息を整えて改めて景色を眺めると、それはそれは素晴らしいパノラマが広がっていたのである。右手に富士山が、足柄山からもう一つスケールアップして聳えている。左手には芦ノ湖を中心に明神ヶ岳など箱根の山々が重なっている。箱根の地理には今一つだったGIZUMOだが、こうして本物のパノラマを眼下にするとよーく分かるというものだ。苦しんで登ってきた苦労が報われる思いである。
 さて、昼飯ということでみんな弁当を広げるのだが、GIZUMOはさっそく金時茶屋に顔を出してみた。中はお土産のカウンターと食堂のようなテーブルが並んでいて広い。お客さんも大勢いて繁盛しているようだ。小屋全体は暗く、だいぶ年季が入っていて、それがまた重厚な味を醸し出している。GIZUMOはそこで生ビールをたのんだ。こういう山小屋で生ビールなど本当に贅沢な話で、ちょっとばかり高価でも仕方がないのだが、ここは700円と良心的だ。
 ビニールカップになみなみ注がれた中ナマを持ってGIZUMOはみんなのところに戻り、まず一口ゴクリと飲んだ。登山中のことであり、そんなに飲むわけにはいかない。一杯のビールをみんなで飲むのである。一口のビールで生き返った我々は昼食を始めた。N嶋さんもSHYUチャンも普通のお弁当なのだが、OB2さんはコンロを持ち出し、お湯を沸かしてラーメンを作っている。OB2さんは格好も若々しく、いわゆる道具から入る方だと見た。気持ちのいい景色を眺めながらの昼食は本当に気持ちの好い瞬間である。
 お腹もいっぱいになって元気が戻ると、我々は散策を始めた。SHYUチャン達が金時茶屋を観察している。GIZUMOは気が付かなかったのだが、天井に名前を書いた札がたくさん掛かっている。「あれはこの山に何度も登った人の名前ですよ、」とSHYUチャンが教えてくれた。「あの人なんか千回も登っているよ、」とOB2さんが奥の札を指さす。百回から始まって二百、三百と多くの人の名前が連なっている。主にこの付近の住人が多いようだ。それにしても同じ山に千回も登るというのは凄い気力である。そんな人もこの世にはいるんですね………。
 SHYUチャン達が楽しみにしていた金時娘は、というと、確かに茶屋の厨房の奥で手拭いを巻いて働いていたようなのだが、暗がりでよく分からない。茶屋の壁に「金時娘はタレントではないので写真など撮らないで下さい、」とある。悪気ではないにしても変な興味で見に来る人(我々もその一員なのだが…。)が多いのだろう。それ以上の詮索は止めることにした。
 記念写真なども撮り終わった頃俄かに風が出てきたので下山することになった。次ぎなる楽しみは温泉である。


SHYUチャン・OB2さん・GIZUMO・N嶋さん

 12:50、下山開始。ルートは矢倉沢峠を通って仙石へ降りる。今度はSHYUチャンが先頭でOB2さん、N嶋さん、GIZUMOは最後という順番で並んだ。下りは急坂が続く。GIZUMOはやや遅れがちである。下りはじめてすぐに若いオネーサンが汗まみれで登ってくる。「もう少しだよ、」と声をかけると「ホントーですかぁー、」と嬉しそうにしている。この急坂を登ってくるのだから凄いと感心してしまう。
 20分ほど急な下りが続く。GIZUMOはやや膝に不安を感じてペースが遅くなる。頼りにしていたN嶋さんは巨漢のわりに以外と早く下っていく。「膝にこないの?、」と聞くと「もう笑ってます、」とは言うのだが当初のGIZUMOほど膝にきているようでもない。やはり若さなのかな……。
 厳しい下り、逆に言えば厳しい登りなのにかかわらず、年配の登山者が登ってくる。金時茶屋の札に書いてある人達はこういう人達なのではないだろうか。しかしさすがに辛そうである。N嶋さんが「ここを登ってたら大変でしたね……、」という。でもコースが短いので案外そうでもないかもしれない、とGIZUMOは思ったのであった。うぐいす茶屋の屋根が下に見えてくると道は穏やかになり、正面に明神ヶ岳が見えてくるとルートの景色は一変する。
 肩くらいまである笹が一面に生えていて、その中を登山道が縫っている。明神ヶ岳方向にも伸びていて、別世界への道のようにも見える。そういえば子供の頃親父に箱根に連れてきてもらった時、こんな道を見て「あの道の向こうになにがあるんだろう……、」とぼんやり考えていたのを思い出してしまった。「どうします?、明神ヶ岳まで行きましょうか、」SHYUチャンが聞いてきた。微妙な時間である。あっちまで行けば下山は四時頃になる。N嶋さんなどちょっと厳しい顔をしている「今日は無理じゃないの、」とGIZUMO。SHYUチャンは諦めきれないようだ。「まだちょっと歩き足りない感じなんですよね。」
 13:25、矢倉沢峠に着いてしまった。ここは明神ヶ岳への分岐である。SHYUチャンはいきたそうである。OB2さんとN嶋さんは降りたいようだ。GIZUMOも半々だったのだが、迷った時は安全策だと説得することにした。
 そこから十五分ほどで仙石原の登山口に着いてしまった。しばらく瀟洒な別荘が続く町をアーダコーダ言いながら進む。ここでも自衛隊の演習の音が聞こえている。せっかくの高級別荘地が台無しだ。すぐにバス停に到着。確かに下山コースとしては物足りないが、帰りのことを考えるとこれでいいのかもしれない。
 14:00、バス停に到着。十分ちょっとでバスに乗ると思わずうたた寝しそうになってしまった。二十分ほどで宮の下に到着。運賃は470円。ちょっと高い気がする。
 ここで日帰り温泉に入るのだが、SHYUチャン曰く「箱根では500円以上の温泉に入ってはいけない、」そうである。立派な温泉は源泉を水で薄めているのだという。我々が目指している温泉は安い上に混じりっけなしの源泉なんだそうである。三人は前回も来たようだがGIZUMOは初めてである。
 大通りの角を曲がると、箱根とは思えないような、まるでつげ義春の漫画に出て気そうな「湯屋」の玄関が見える。300円を支払って中に入るとこれまた侘しくなるような狭い待合室がある。N嶋さんが最初に入ったのだが脱衣場に入ろうとしない。「中は狭いんですよ、」といってみんなここでリュックなどを下ろしている。要領を得ないままGIZUMOもリュックをおろし着替えを出した。脱衣場は畳一畳半くらいで、確かに四人で服を脱ぐには狭すぎる。
 浴場は十人くらいは入れそうなのだが、全体的に古めかしく、懐かしい感じもする。カランは蛇口で、お湯と水が並んでいて桶でミックスしなければならない。GIZUMOは体を洗うのは諦めた。お湯はちょっと熱めだが入ってみると気持ちが好い。大きな窓からは山が見えて旅情をかきたててくれる。まさにつげ義春の世界である。源泉そのままという感じが体をほぐしていく。
 温泉から出ると、湯元までは登山鉄道で行くことになった。なんとバスよりも安いのである。時間が迫っていたので走って駅に駆け込む。SHYUチャンは初めて乗るのだそうだ。ここでもGIZUMOは一人で腰かけることになった。GIZUMOの隣には可愛い小学生の女の子が二人座っていておしゃべりをしている。なんか日常的で登山という雰囲気ではない。
 湯元でロマンスカーの切符を買うと、コンビニでお酒とつまみを買った。OB2さんとN嶋さんがソフトクリームを食べている。GIZUMOもさっそく食べたのは言うまでもない。SHYUチャンはかまぼこ屋でなにか買っている。このグループはなににつけても早め早めに行動するようだ。列車の出発のかなり前に乗り込み、すぐに乾杯である。いい親爺が四人で酒飲んでいるのである。他のお客さんはドー思うのかなあ……。でも、もっとも楽しい時間である。
 こうして無事に金時山登山は終わりを迎えていた。普段あまりしゃべったことがないOB2さんやN嶋さんとも仲良くなれた。特にN嶋さんはとても観察力があって、驚かされてばかりだった。しかしもっとも驚いたのは、N嶋さんがチョコレートを肴にビールを飲むことだ。これが美味いんだそうで、GIZUMOが残したアーモンドチョコが終わると、今度はチョコポッキーで飲んでいた。マ、太るのも当然である。OB2さんもこだわりを持っているのが分かった。服装から登山用品、食事に至るまでOB2さんなりの工夫があって素晴らしい。そしてSHYUチャンもリーダーとしてみんなを引っ張りつつ細かい気配りがあって頼もしい。みんなで酒を酌み交わし、それぞれ持ち寄ったものを食べ合って、こうして理解が深まっていくのだろう。ロマンスカーで酒盛りをしながらGIZUMOは好い気持ちで金時山を振り返っていた。
 17:50、ほぼ12時間で南大沢に帰ってきた。ここでSHYUチャンと分かれてGIZUMOは孫のところに立ち寄った。実は金時茶屋で「金太郎さんの腹掛け」をお土産に買ってきたのだ。だんだん立派な祖父ちゃんになっていくGIZUMOなのであった。

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