
三頭山、大岳山に続いて奥多摩三山の一つ御前山にようやく挑戦できることになった。ずっと気になっていたのだがなかなか行くチャンスがなかった。今回はKONISHIと一緒に行くことになった。
七時に家を出て途中でKONISHIを拾って奥多摩街道を青梅に向かった。道は所々混んでいたが、ほぼ順調に、計画から30分遅れて九時半に奥多摩湖に着いた。ここのところぐずついた天気が続いていたのだが、今日は気持ちのいい晴である。ラッキー。
9;50、準備を終えて出発。今回もKONISHIはオネーちゃんの話をするのだろうか?、GIZUMOとしてはそんな余裕は与えないつもりである。小河内ダムを渡って対岸に行くと左側に立派なトイレと藤棚の下にベンチができている。その奥から登山道が始まるのだ。奥多摩湖はかなり水が少なくなっていてちょっと気にかかる。しかし空と山の緑を反映して素晴らしい景色である。
階段を少し登ると道標がある。右はすぐに頂上広場と呼ばれる展望台に行く。左は御前山である。左に折れるとこれまたすぐに急登りが始まる。
10;15、急坂を登り始める。これは本当にきつくて、所々にロープが張ってあるのだが、それはルートを示している、というよりそれを伝って登るためのもののようだ。「なんだこれは、こんな凄いとは聞いてないぞ、」KONISHIが文句を言いながらも頑張っている。15分ほど登ったところで奥多摩湖が見えたのだがかなり下になっている。「いやぁ、もうこんなに登ったのか…、」GIZUMOも思わず感嘆の声を挙げた。
息が上がったのでここで一休み。といっても腰を下ろすスペースを捜すのに一苦労するほど傾斜がきつい。長く休むと嫌になってしまうのですぐに出発した。十五分ほどしてまた一休み。あまりの凄まじい登りにKONISHIもオネーちゃんの話をする余裕はなさそうである。
それから三十分頑張るとようやく広場に出る。右側には携帯用と思われる大きなアンテナが立っていて、その先から奥多摩湖が見下ろせる。今までの苦労が報われる一瞬である。たぶんサス沢山だと思う。ここで休憩をした。KONISHIは携帯で湖の光景を撮影して誰かに送っている。また別の女らしい。実にまめである。
そこからはしばらく普通の山道が続く。普通のルートよりひょっとしたら傾斜がきついのかもしれないが、最初の急登りを体験した身には楽に感じる。
11;50、再びやや急な登りが始まる。白い石灰岩が剥き出しになったルートがあって印象的である。それから先は所々に巨大な石灰岩や花崗岩が岩座のように置かれている。これはGIZUMOのもう一つの分野に属するものなので省略するが、この山にも存在したのだと思うと不思議な感じである。

12;30、一登りしたところで休憩したのだが、そこにははっきりと岩座状に岩が置かれた場所があって興味深かった。下から見上げればただの岩だが、上から見るとストーンサークル状に配置されている。何の為かと聞かれると判らないのだが、とりあえずこの山の神の居場所とでも考えればいいのではないだろうか。手を合わせて柏手を打っているGIZUMOにKONISHIはせせら笑いを浮かべるのであった。
そのすぐ先からカタクリが群生している。最初はなんだか分からなかったのだが、そうか、これがカタクリなんだ、と気がついた。しかしそこからは又々凄い登りが待っていた。「いったいなんだよ、またここを登るのかよ…、」KONISHIのボヤキも分かる。ただ、こんな登りを歩いてきたせいか、体が慣れてしまったようで実際登り始めるとそれほど苦しいわけではない。もう一つは登りの長さ一つ一つがそれほど長くないこともあるだろう。やれやれと思うと次の坂が待っているのだが、上を見上げると頂上が見えるのでなんとか続くのだろう。
12;45、惣岳山に到着。「ここが頂上なの?、」と息を切らすKONISHIに「もう一つ先だけど、すぐそこだよ、」と答える。「ウヘェー、」と悲鳴を挙げるKONISHIであった。しかし歩き始めると木の間から御前山が目の前に見えた。「ほら、あそこだよ、」と言われても飛んで行けるわけではないのでガックリである。
13;00、御前山山頂に到着。いやぁ、凄い登りだっです。少し時間が遅かったせいかそこには既に数人のハイカーがお弁当を済ませてのんびりとしていた。頂上は広く、奇麗なベンチもあって快適である。展望もよく、特に北側の秩父方面の山は色鮮やかに見えた。ここで我々もお弁当を広げた。
KONISHIが水をチビチビ飲んでいる。こんなこともあろうかとKONISHIの分を余計に一本持ってきていたのでそれを差し出すと、最初は断りつつも背に腹は変えられずグイと飲んだ。登山に水は必需品である。こういうことは体験から覚えるしかないのだ。次は余裕をもって背ってこいよ。
食事が済むとベンチにゴロリと横になった。空を見ているとちょうど雲が湧き上がっているのが見える。なんの気なしにボンヤリ見ていると雲の一部が龍のように見える。動きが早くてまるで生きているようであった。昔の人はこんなところから龍を想像したのかもしれないな、などと思いに耽っていた。しかし我々は下山しなければならない。小一時間で出発することにした。
頂上からちょっと下ったところに眺望が抜群の場所がある。そこで写真を撮ったりして止まった。KONISHIは膝が不安らしくサポーターを巻いたりして余念がない。
14;00、下山開始。きつい登りは下るときもきつい。下りはかなり上達したGIZUMOは足に負担がかからないようにルートどりしながら下りたが、普通のトレッキングシューズで来ていたKONISHIはかなり苦労していた。前回も靴のことはかなり強く言ったのだが、こういうことは体験してみないと分からないものである。体験したって言うことを聞かないK氏のような人もいるわけで、オネーちゃんに使う金のほんの一部で立派な靴が買えるのだからそうした方がいいよ、とアドバイスしたわけである。今回でKONISHIは少しはましな靴を買うと思う。
15;10、サス沢山に到着。ここまでは比較的楽に下りてこれた。勾配が急だがその分ルートの道程が短いのでちょっと頑張ればかなり先に進んでしまうのだ。ここからは一番の急坂を下りるのだが、「たいした距離はないから頑張ろう、」とKONISHIを励ました。
こけつまろびつというわけではないが、ここからの下りはまさに崖を下りているような感じである。高低差200メートルと言われるがここだけは長く感じる。GIZUMOは自分のことよりもKONISHIに気を使っていたので辛さは感じなかったが、まあ凄いところである。

16;00、ようやく下山。湖畔のベンチに腰を下ろしてやれやれである。しかし二度目の登山でこの山を登り抜いたKONISHIを素直に褒めた。オネーちゃんとの失恋を忘れたい一心とはいいながらもよく頑張ったと思う。K氏だったらどうなっていたか分からないな…。
御前山の凄さはこの急登りなんだと改めて思った。ただ、救いはルートが短いこと。登りもきつくてルートが長いという山はたくさんある。そういう意味では手頃な山かもしれない。とにかく念願の奥多摩三山を制覇したので気持ちがすっきりした。KONISHIも少しは登山の楽しみ、充実した達成感などの快感を覚えたようで、帰り道に早くも次の山の話をしていた。
帰りはサルビアの湯に寄って汗を流した。吉野街道から八王子を抜けたのだがこちらも驚くほど空いていて予定よりも早く帰ることができた。これも岩座にいた御前山の神様に礼を尽くしたお陰かもしれないね。

